野元賢一

大阪市の元会社員が2007年から09年の間、インターネットで28億7000万円の馬券を購入し、払戻金30億1000万円を得た。一般的なサラリーマンの場合、一時所得のもうけが年90万円を超えると申告義務が生じるが、元会社員はこれを怠ったとして大阪国税局が税務調査。6億4000万円の所得税が課され、検察は払戻金を申告せず5億7000万円を脱税したとして起訴した。5月23日の大阪地裁判決は所得税法違反は認めて、懲役2月・執行猶予2年(求刑懲役1年)を言い渡した。しかし、脱税額については「利益は外れたレースも含めて継続的に馬券を購入してきた結果によるもので、当たった馬券の購入代だけでなく、外れ馬券の代金も必要経費になる」という元会社員側の主張を認め、5200万円に減額した。 払戻金への課税は二重取りとの見方もあるし、赤字でも課税となれば、馬券の売り上げが萎縮し、取った税金以上に国庫納付金が急減。差し引きで国家財政の懐勘定としてはマイナス、という本末転倒になりかねない。 被告側の弁護士は判決後、「もともとほとんど税収がなかったのだから、宝くじのように非課税にして、安心して馬券を買ってもらえばよいのでは」と話している。 馬券を買っている人の9割はトータルで損をし、まれにプラスを出した人も含めて所得申告している人は皆無に等しいとみられる。 このゆがんだ状態のままでいいはずはないが、JRAは寡黙だ。判決を受けて、JRAは「払戻金の課税については、『競馬産業全体に関わる問題』といった観点から、お客様が安心して競馬を楽しめるようなものにしていただきたいと考えております」とコメントした。